舟を漕ぐ,藪を漕ぐ,自転車を漕ぐ,ブランコを漕ぐ.ずいぶんと多くのものを漕ぐことができるようです.「漕ぐ」ってどういう意味ですか?とか聞かれたら,その対象の広さに少し戸惑ってしまいそうです.つらつら考えるに,「漕ぐ」に共通した動きは「単純な繰り返し動作」なのだと思います.道具をつかうことに着目している方もいらっしゃるようですが,藪を考えると「何かを押したり引いたりする繰り返し動作で前や後に進む」というイメージが近いような気がします.このイメージなら地面をけり続けて進む「スケボーを漕ぐ」やストックで雪を押し続けて進む「スキーを漕ぐ」もしっくり来ます.

「漕ぐ」には不思議な魅力があります.私は,同じ「単調動作で前に進む」でも,「歩く」や「走る」,「泳ぐ」は,なぜか途中で止まってしまいたくなります.ところが「漕ぐ」だったら淡々と続けることができるのです(藪は除く).なにかに力を伝えているその感覚を意識して,1サイクル,1ストロークの効率に集中します.繰り返しの中で,時々現れる会心の一撃.いますごくいタイミングで力が伝わったという快感.その快感をもとめて「漕ぐ」に集中し,止まらなくなるのです.自転車やカヤックでは,むしろ止まってはいけないという強迫観念すら生まれます.この修行モードに入ってしまうと,ペースを落とすとかペースを人に合わせるとかできなくなって,同行者は置いてけ掘りという状態に…ごめんなさい.

そんな「漕ぐ」にはまって,「自転車漕ぐよ!」「カヤック漕ぐよ!」「沢を登ったら薮漕ぐよ!」「雪山行ったら雪漕ぐよ!」「会議中には舟漕ぐよ!」の勢いで「漕ぐよ!」をはじめます.本当は,出る腹をみて「漕がねば!」なのですがね.

 

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